結論:Uber Eatsは戦略次第で今も稼げるのか?
「Uber Eatsの配達は、今から始めても本当に稼げるのか?」――これは多くの人が抱く疑問でしょう。結論から言えば、2025年現在も、戦略的に取り組めば十分に稼ぐことは可能です。しかし、誰でも簡単に高収入を得られる「楽な仕事」ではなくなった、というのもまた事実です。
かつてのような「ただオンラインにしているだけで稼げた」時代は終わり、現在は配達員のスキル、知識、そして戦略が収入に直結する「実力主義」の時代に突入しています。特に都市部では、報酬システムの変化により、むしろ以前より高収入を目指せる環境が整いつつあるとの声も聞かれます。
成功の鍵は、「情報収集」と「試行錯誤」です。どのエリアが、どの時間帯に、どんな天候で稼げるのか。どのインセンティブを狙うべきか。自分なりの「勝ちパターン」を見つけ出すことが、他の配達員と差をつける最大のポイントです。
「稼げる人」と「稼げない人」の二極化
現在のUber Eats配達員をめぐる最も大きな特徴は、収入の「二極化」です。一部の配達員は、アルゴリズムを理解し、効率的な立ち回りをすることで時給3,000円、悪天候時には時給5,000円以上を達成し、月収100万円を超えるケースも報告されています。
一方で、戦略なく稼働する配達員は、最低報酬額に近い低単価の案件に苦しみ、「時給1,000円を切ることも珍しくない」という状況に陥りがちです。この差を生んでいるのが、本記事で解説する「戦略」の有無なのです。
【2025年】Uber Eats配達員の収入実態
では、具体的にUber Eats配達員はどれくらいの収入を得ているのでしょうか。様々なデータを基に、その実態に迫ります。
平均時給はどれくらい?
Uber Eatsの報酬は完全出来高制のため、固定の時給はありません。しかし、多くの調査や配達員の報告を総合すると、全国的な時給換算の平均は1,200円〜1,800円の範囲に収まることが多いようです。
ただし、これはあくまで平均値。稼働するエリアによって大きな差が生まれます。特に東京は突出しており、新宿や渋谷などの繁華街では時給2,500円を超えることも珍しくありません。
月収の目安:副業から専業まで
月収は稼働時間によって大きく変動します。以下は、稼働スタイル別の月収目安です。
- 副業(週末中心):土日に8時間ずつ稼働した場合、ピークタイムをうまく活用すれば1日8,000円〜15,000円程度が見込めます。月収にすると6万円〜12万円が現実的なラインです。
- 専業(週5日稼働):本業として週5日フル稼働した場合、月収25万円〜35万円前後が一般的な目安となります。インセンティブ(後述)をうまく獲得できれば、月収40万円を超えることも可能です。
トップ配達員は月収100万円も?
信じがたいかもしれませんが、一部のトップ配達員は月収100万円という大台を達成しています。2025年に入ってからも、SNS上では複数の達成報告が見られます。
これは、高単価案件が頻発する東京などの大都市で、天候や時間帯を読み、インセンティブを最大限に活用し、1日10時間以上といった長時間稼働を続けた結果です。全ての人が達成できるわけではありませんが、Uber Eatsというプラットフォームには、それだけの高収入を得られるポテンシャルがあることを示しています。
Uber Eatsの報酬システム徹底解剖
高収入を目指すには、まず報酬がどのように決まるのかを正確に理解することが不可欠です。2021年以降、報酬体系は複雑化し、配達員からは「ブラックボックス」と揶揄されることもありますが、その根幹には明確なロジックが存在します。
報酬の基本計算式
現在、配達員に提示される報酬は、複数の要素が合算された「ブレンド報酬」です。その基本的な構成は以下のようになっています。
報酬額 = 配送料 + インセンティブ + チップ
このうち、配達員が戦略的にコントロールできるのが「配送料」と「インセンティブ」です。「配送料」は、かつてのように「受け取り料金+受け渡し料金+距離料金」といった内訳が公開されなくなり、AIが算出する見積もり金額が提示される形になりました。
内部的には、以下のような要素が考慮されていると推測されています。
報酬 = B + (T × Pt) + (D × Pd) + S + P + C
B: 基本料金, T: 見積もり時間, Pt: 分単価, D: 距離, Pd: km単価, S: サージ(需給バランス補正), P: プロモーション, C: チップ
報酬を左右する「ダイナミックプライシング」とは?
現在の報酬システムの中核をなすのが「ダイナミックプライシング(価格変動制)」です。これは、特定のエリアや時間帯における「注文の需要」と「配達員の供給」のバランスによって、配達報酬がリアルタイムで変動する仕組みです。
具体的には、以下のような状況で報酬が上昇しやすくなります。
- 注文が集中する時間帯(ランチ、ディナー)
- 配達員が少ない状況(悪天候、早朝・深夜)
- 注文が急増するイベント(祝日、スポーツの試合など)
2024年12月から2025年1月にかけて行われたシステム変更では、この需給バランスの重要性がさらに強調されました。Uberからの通知でも「注文数に対して配達パートナーの数が少ない地域においては、配送料の水準が高くなる可能性がある」と明言されており、この仕組みを理解し、活用することが高収入への第一歩となります。
「スリコ」「ミツオ」問題:最低報酬額の変遷
ダイナミックプライシングの一方で、配達員を悩ませているのが低単価問題です。特に、短距離の配達で提示される最低報酬額は、配達員の間でスラングで呼ばれるほど象徴的な存在となっています。
- スリコ(300円):2021年11月の改定で設定された最低報酬額300円のこと。「スリーコインズ」を略して「スリコ」と呼ばれ、多くの配達員のモチベーションを低下させました。
- ミツオ(320円):2024年1月のアルゴリズム変更後、最低報酬額が320円に。その語呂から「ミツオ」という愛称で呼ばれています。 この金額は、配達時間15分以内、距離3km以内程度の案件で提示されることが多いようです。
これらの低単価案件をいかに避け、より報酬の高い案件を選択するかが、現代のUber Eats配達における重要な戦略の一つとなっています
収入をブーストするインセンティブ(追加報酬)
基本の配送料に加えて、収入を大きく押し上げるのが「インセンティブ」です。これらを戦略的に活用することで、週間の収入は大きく変わります。
クエスト:配達回数でボーナスを獲得
「クエスト」は、指定された期間内に一定回数の配達を完了すると、追加でボーナス報酬がもらえるプロモーションです。例えば、「週末3日間で40回配達すれば3,200円追加」といった形で提示されます。
- 日跨ぎクエスト:月曜〜木曜、金曜〜日曜といった週2回の期間で設定されることが多いです。
- 雨クエスト(悪天候クエスト):雨や雪など、天候が悪い日に発生する特別なクエスト。1回の配達ごとに追加報酬がもらえる形式が多く、非常に稼ぎやすいチャンスです。
- 限定オファー:祝日などの連休に、配達員を確保するためにスポット的に発生します。
クエストは配達員ごとに内容が異なる場合があり、SNSなどでは報酬額が高いものを「アタリ」、低いものを「ハズレ」と呼ぶこともあります。
ピーク料金とブースト:需要集中エリアで単価アップ
ダイナミックプライシングを視覚的に示したものが「ピーク料金」と「ブースト」です。
- ピーク料金(シミ):注文が特に集中しているエリアが、アプリの地図上で赤く表示されます。このエリアで配達を完了すると、表示された追加料金が報酬に加算されます。その見た目から「シミ」とも呼ばれます。
- ブースト:特定のエリアや時間帯で、基本料金が1.1倍、1.2倍などと倍率でアップするインセンティブです。ピーク料金と同時に発生することもあります。
これらのインセンティブが発生しているエリアや時間帯を狙って稼働することが、効率よく稼ぐための基本戦略となります。
収入を最大化する8つの戦略
では、具体的にどうすれば収入を増やせるのでしょうか。多くのベテラン配達員が実践している、効果的な8つの戦略を紹介します。
戦略1:稼げる「エリア」で稼働する
最も重要なのが「どこで稼働するか」です。注文の多いエリア、つまり「加盟レストランが多く、利用者が多い地域」を選ぶのが基本中の基本です。
- 繁華街・オフィス街:新宿、渋谷、港区(六本木・麻布)、銀座などは、レストランが密集し、昼夜問わず注文が多いため、最も稼ぎやすいエリアです。特に平日のランチタイムはオフィス街、夜や休日は繁華街が狙い目です。
- 住宅密集地:タワーマンションが立ち並ぶエリアなどは、ディナータイムや週末に安定した需要が見込めます。
- 戦略的な待機場所:ただエリアに行くだけでなく、マクドナルドやスターバックスなど、常に注文が入りやすい人気チェーン店の近くで待機するのが効果的です。
戦略2:稼げる「時間帯」を狙う
やみくもに長時間稼働するのではなく、注文が集中する「ピークタイム」に絞って稼働することが効率化の鍵です。
- ランチタイム(11:00〜14:00):1日で最も安定して注文が入る時間帯。オフィス街や繁華街が中心です。
- ディナータイム(18:00〜21:00):ランチに次ぐピークタイム。住宅街での需要が高まり、注文単価も上がる傾向にあります。
- 穴場の時間帯(早朝・深夜):稼働する配達員が減るため、ライバルが少なくなり、思わぬ高単価案件(クジラ案件)に出会えることがあります。特に23時〜深夜1時頃は小さなピークがあります。
戦略3:天候を味方につける
多くの人が嫌がる悪天候(雨、雪、猛暑、極寒)の日は、Uber Eats配達員にとって最大の稼ぎ時です。外出を控える人が増えて注文が殺到する一方、稼働する配達員は激減します。この需要と供給のアンバランスが、ダイナミックプライシングを最大限に機能させます。
- 報酬単価の急上昇:通常300円台の案件が1,000円を超えることも珍しくありません。
- 雨クエストの発生:追加報酬でさらに収入がアップします。
- 鳴り止まないリクエスト:待機時間がほぼなくなり、効率的に配達件数を重ねられます。
悪天候時の稼働は、時給5,000円以上も狙える絶好のチャンスです。ただし、視界不良やスリップなど危険も伴うため、レインウェアや滑り止めタイヤなどの装備を万全にし、安全を最優先で稼働することが重要です。
戦略4:インセンティブを攻略する
クエストの達成は、週間の総収入を大きく左右します。クエスト達成を狙う際は、闇雲に配達するのではなく、戦略を立てることが重要です。
クエストは配達件数ベースなので、長距離の配達で単価を稼ぐより、短距離の配達で件数を稼ぐ戦略もありです。
例えば、クエスト達成が近い終盤では、あえて単価が低くても配達時間が短い案件(ショート案件)を選び、確実に回数をこなすといった判断が求められます。
戦略5:配達車両を最適化する
自転車とバイク(原付)では、それぞれ得意な案件が異なります。自分の稼働スタイルやエリアに合わせて車両を選ぶことも戦略の一つです。
- 自転車:小回りが利き、駐輪場所に困らないため、都心部のショート案件やクエスト達成に向いています。初期投資や維持費が安いのもメリットです。
- バイク・軽自動車:長距離の配達(ロング案件)が割り振られやすく、1件あたりの報酬が高くなる傾向があります。体力的な負担が少なく、長時間の稼働や悪天候時の稼働にも有利です。
一般的に、バイクの方が自転車よりも平均単価が高く、稼ぎやすいと言われています。
戦略6:高単価案件を「厳選」する
「来るリクエストをすべて受ける(全受け)」スタイルは、特に注文が少ない時間帯やエリアでは非効率になりがちです。稼げる配達員は、提示された報酬額、距離、時間を見て、割に合わない案件を「拒否(スルー)」し、高単価の案件を待つ「案件厳選」という立ち回りをしています。
判断基準は人それぞれですが、一例として以下のような目安があります。
- 時給換算2,000円(分単価33円)以上
- 距離単価(キロ単価)200円以上
ただし、この戦略は配達リクエストが頻繁に来る(鳴りが良い)状況でなければ成立しません。鳴りが悪い時に厳選しすぎると、かえって待機時間が増えて非効率になるため、状況に応じた見極めが重要です。
戦略7:他社サービスとの「ハイブリッド稼働」
Uber Eats一本に絞らず、出前館やWoltなど、他のフードデリバリーサービスと同時にオンラインにする「ハイブリッド稼働(複数アプリの同時起動)」は、多くのベテラン配達員が実践している上級テクニックです。
これにより、Uber Eatsの注文が途切れた時間帯に他社からのリクエストを受けられるため、待機時間を最小限に抑え、収入を安定・最大化させることができます。 特に、配達員不足が深刻化している新興サービス「Rocket Now」などは、サービス初期の高単価報酬が狙えるため、併用する価値が高いと注目されています。
戦略8:配達の「土地勘」と「効率」を磨く
最終的に収入を左右するのは、配達の「質」です。同じエリアで稼働していても、土地勘があるかないかで配達効率は大きく変わります。
- 近道や抜け道、信号の少ないルートの把握
- レストランの場所やピックアップ手順の習熟
- タワーマンションなど、複雑な建物の配達ルートの把握
これらの経験を積み重ねることで、1件あたりの配達時間を短縮でき、結果的に時間あたりの配達件数が増え、時給アップに繋がります。
知っておくべき経費と税金の話
Uber Eatsで得た収入は、すべてが手元に残るわけではありません。配達に必要な経費を差し引き、残った所得に対して税金がかかる場合があります。
主な経費(必要経費)
配達のためにかかった費用は「必要経費」として収入から差し引くことができます。領収書やレシートは必ず保管しておきましょう。
- 車両関連費:ガソリン代、バイク・自動車の購入費(減価償却)、軽自動車税、保険料(自賠責・任意)
- メンテナンス費:オイル交換、タイヤ交換、修理代
- 通信費:スマートフォンの本体代(減価償却)、通信料金
- 備品費:配達バッグ、スマートフォンホルダー、モバイルバッテリー、レインウェアなど
確定申告は必要?
Uber Eats配達員は個人事業主にあたるため、一定以上の所得がある場合は確定申告が必要です。
- 副業の場合:会社で年末調整を受けており、Uber Eatsでの所得(収入から経費を引いた額)が年間20万円を超える場合に確定申告が必要です。
- 専業の場合:年間の所得が48万円(基礎控除額)を超える場合に確定申告が必要です。
確定申告をすることで、払いすぎた税金が戻ってくる可能性もあります。経費をきちんと計上するためにも、日頃から帳簿をつけておくことをお勧めします。
まとめ:2025年もUber Eatsは「考えて動く人」が稼げる時代
本記事では、2025年現在のUber Eats配達員の収入事情について、報酬システムから具体的な戦略まで多角的に解説しました。
結論として、「Uber Eatsは、戦略的に取り組めば2025年でも十分に稼げる仕事」と言えます。報酬システムは複雑化し、低単価案件に悩まされる場面もありますが、一方で需給バランスを読めば、コロナ禍のピーク時を上回る高単価を得るチャンスも増えています。
成功の鍵は、もはや長時間稼働することだけではありません。エリア、時間、天候を読み解き、インセンティブを最大限に活用し、時には他社サービスも併用する。こうした「考えて動く」姿勢こそが、他の配達員と差をつけ、高収入を実現する唯一の道です。自由な働き方に魅力を感じ、自分の工夫次第で収入を増やしたいと考えている方にとって、Uber Eats配達パートナーは依然として非常に魅力的な選択肢の一つであり続けるでしょう。



