【副業解禁】会社員がUber Eats配達員を始める前に知るべき全知識

Uber Eats配達パートナーとは？ギグワークという新しい働き方

Uber Eatsの配達パートナーは、アルバイトやパートタイマーのような「雇用契約」ではなく、個人事業主としてUberと「業務委託契約」を結びます。これは「ギグワーク」と呼ばれる働き方で、単発の仕事を請け負う形態を指します。

この契約形態のため、配達パートナーは労働基準法上の「労働者」とは見なされず、勤務時間や場所の拘束を受けません。好きな時にアプリをオンラインにして仕事を開始し、好きな時にオフラインにして終了できる自由さが最大の魅力です。しかし、この「自由」には、労働者として保護されないという側面も伴います。

ギグワークとは？
音楽業界で使われていた「ギグ（Gig）」という言葉が由来で、単発の演奏仕事を指していました。現在では、インターネットのプラットフォームを通じて、個人が単発・短期の仕事を請け負う柔軟な働き方を指す言葉として広く使われています。

ただし、「完全に自由」というわけではありません。多くのエリアでは、レストランの営業時間に連動し、稼働できるのは概ね午前9時から深夜24時までとされています。また、安全上の理由から、一度に連続して稼働できる時間には上限（12時間）が設けられています。

配達パートナーになるための基本要件

Uber Eatsの配達パートナーになるためのハードルは比較的低いですが、いくつかの基本要件を満たす必要があります。

年齢：18歳以上であること。
配達手段：自転車、原付バイク（125cc以下）、軽貨物車両またはバイク（125cc超）、あるいは徒歩で登録が可能です。車両ごとに必要な書類が異なります。
必要書類：身分証明書（運転免許証、パスポートなど）、プロフィール写真が必要です。車両を使用する場合は、運転免許証や自賠責保険証なども追加で求められます。
在留資格（外国籍の方）：日本国籍でない場合は、就労が認められる在留資格と、その証明書類の提出が必須です。

特別な資格は不要で、オンラインで簡単に登録手続きを進められるのが特徴です。ただし、公務員など、法律や職場の規定で副業が禁止されている場合は登録できません。

収入と経費のリアル：一体いくら稼げるのか？

「Uber Eatsは稼げる」という声もあれば、「割に合わない」という意見もあります。実際のところ、収入は様々な要因によって大きく変動します。

収入の仕組みと変動要因

配達パートナーの報酬は時給制ではなく、1回ごとの配達に対して支払われる成果報酬型です。報酬は主に以下の要素で構成されます。

基本料金：受け取り場所や届け先までの距離、所要時間などに応じて計算されます。
インセンティブ：「ブースト」（特定のエリアや時間帯で基本料金が上乗せされる）や「クエスト」（一定回数の配達を完了すると追加ボーナスがもらえる）など、収入を押し上げる仕組みがあります。

そのため、収入は以下の要因に大きく左右されます。

エリア：注文の多い都心部や、配達員が少ない地方都市など、地域によって稼ぎやすさは異なります。
時間帯：ランチタイム（11時〜14時）やディナータイム（18時〜21時）は注文が集中し、稼ぎやすいピークタイムです。
天候：雨の日などは注文が増える一方で配達員が減るため、報酬が高くなる傾向にあります。
配達員の数：周辺にライバルとなる配達員が多いと、注文を受けにくくなることがあります。

一概に「月収いくら」とは言えませんが、例えば大阪で副業として平日の夜と週末に稼働した場合、月収11万円程度というシミュレーションもあります。しかし、これはあくまで一例であり、本人の努力や戦略次第で大きく変わることを理解しておく必要があります。

節税に繋がる「必要経費」とは？

個人事業主である配達パートナーは、事業（配達業務）のためにかかった費用を「必要経費」として計上できます。収入から経費を差し引いたものが「所得」となり、この所得に対して税金がかかります。経費を漏れなく計上することが、節税の第一歩です。

主な経費としては、以下のようなものが挙げられます。

車両関連費：自転車やバイクの購入費、修理代、メンテナンス費用、駐輪場代など。
ガソリン代：バイクや車で配達する場合の燃料費。
通信費：スマートフォンの通信料。プライベートと共用している場合は、業務で使った割合分を「家事按分」して計上します。
備品・消耗品費：配達バッグ、スマートフォンホルダー、モバイルバッテリー、雨具などの購入費。
保険料：任意で加入する自転車保険や傷害保険の保険料。

これらの支払いを証明する領収書やレシートは、必ず保管しておきましょう。

【最重要】会社員の副業と税金：確定申告は必要？

会社員が副業をする上で、最も注意すべき点が税金の問題です。これを怠ると、後から追徴課税などのペナルティを受ける可能性があります。

「20万円の壁」の真実

会社員（給与所得者）の副業に関する税金のルールとして、よく「20万円の壁」という言葉が使われます。これは、副業による年間の「所得」が20万円を超えた場合に、所得税の確定申告が必要になるというルールです。

所得 = 収入（売上） – 必要経費

重要なのは、売上そのものではなく、売上から経費を差し引いた「儲け」である所得が基準になる点です。例えば、年間の売上が30万円でも、経費が15万円かかっていれば所得は15万円となり、20万円以下なので原則として確定申告は不要です。

ただし、注意点が2つあります。

住民税の申告は必要：所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要です。住民税には20万円ルールはなく、所得が1円でもあれば申告義務があります。確定申告をすれば、その情報が市区町村に連携されるため住民税の申告は不要ですが、しない場合は自分で市区町村の役所に申告する必要があります。
医療費控除などを受ける場合：医療費控除やふるさと納税（ワンストップ特例制度を利用しない場合）などで確定申告をする場合は、副業所得が20万円以下であっても、その所得を申告書に記載しなければなりません。

※本業の給与所得がある会社員を想定した概算値。所得税率は所得控除を考慮せず、所得金額に応じて5%〜10%で計算。住民税率は一律10%で計算。実際の税額は個々の状況により異なります。

確定申告をしないとどうなる？

申告義務があるにもかかわらず確定申告を怠ると、ペナルティが課せられます。税務署の調査で発覚した場合、本来納めるべき税金に加えて、「無申告加算税」（納付税額の15%〜20%）や、悪質な場合は「重加算税」（同35%〜40%）、さらに延滞期間に応じた「延滞税」が課されることになります。

青色申告でさらなる節税も

Uber Eatsの配達を継続的に行い、事業として取り組む場合は、「開業届」を税務署に提出し、「青色申告承認申請書」を提出することで「青色申告」が可能になります。青色申告には、最大65万円の特別控除が受けられる、赤字を3年間繰り越せるなどの大きな節税メリットがあります。副業の規模が大きくなってきたら、検討する価値があるでしょう。

会社の就業規則と「副業バレ」対策

税金と並んで重要なのが、本業の会社との関係です。副業を始める前には、必ず自社のルールを確認しましょう。

まずは就業規則を確認しよう

近年、政府は副業・兼業を促進していますが、最終的な判断は各企業に委ねられています。まずは自社の「就業規則」で副業に関する規定を確認しましょう。主なパターンは以下の通りです。

原則禁止：今でも禁止している企業は存在します。
許可制：申請し、会社の許可を得れば可能。最も多いパターンです。
届出制：会社に届け出ることで可能。
原則自由：特に規定がない、または自由と明記されている。

たとえ副業が自由であっても、以下のようなケースでは会社から制限されたり、懲戒処分の対象となったりする可能性があります。

本業の業務に支障をきたす場合（疲労による遅刻・欠勤など）
会社の機密情報が漏洩するリスクがある場合
競合他社で働くなど、会社の利益を害する場合
会社の社会的信用を損なうような行為があった場合

Uber Eatsの配達自体がこれらに直接該当することは稀ですが、深夜まで働きすぎて本業に影響が出るようなことがないよう、自己管理が求められます。

副業が会社にバレる主な原因と対策

会社に内緒で副業をしたいと考える人もいるかもしれませんが、発覚するリスクは常にあります。主な原因は「住民税」です。

通常、会社員の住民税は給与から天引き（特別徴収）されます。副業で所得が増えると住民税額も増え、その通知が会社の経理担当者に届くため、「給与の割に住民税が高い」ということから副業が発覚します。

このリスクを避けるためには、確定申告の際に、住民税の納付方法で「自分で納付（普通徴収）」を選択することが有効です。これにより、副業分の住民税の納付書が自宅に届き、自分で納めることができるため、会社に通知が行くのを防げます。

労働者ではない？社会保険と万が一の事故への備え

個人事業主として働くことは、会社員とは異なるリスク管理が求められることを意味します。

法的な位置づけと社会保険

前述の通り、配達パートナーは労働基準法上の「労働者」ではありません。これは、最低賃金や有給休暇、残業代といった保護が適用されないことを意味します。

一方で、2022年に東京都労働委員会は、Uber Eats配達員が労働組合法上の「労働者」に当たるとの判断を示しました。これにより、配達員は組合を結成し、運営会社と団体交渉を行う権利が認められました。これは労働条件の改善に向けた一歩ですが、労働基準法上の保護とは異なる点に注意が必要です。

社会保険についても、会社員のように会社の健康保険や厚生年金には加入できません。自分で「国民健康保険」と「国民年金」に加入する必要があります。ただし、本業の会社で社会保険に加入している場合は、副業を始めてもそちらの資格が継続されるため、新たに行う手続きは基本的にありません。

配達中の事故に備える保険制度

配達中の事故は最大のリスクです。個人事業主は、仕事中のケガも自己責任が原則ですが、いくつかのセーフティネットが用意されています。

労災保険の特別加入：2021年9月から、フードデリバリー配達員も労災保険に「特別加入」できるようになりました。これにより、業務中のケガに対して治療費や休業補償などの給付を受けられます。加入は任意ですが、万が一に備えて検討すべき制度です。
Uber Eatsの傷害補償制度：Uberは三井住友海上火災保険と提携し、配達中の事故によるケガ（入院、死亡・後遺障害など）や、他人をケガさせたり他人の物を壊したりした場合の対人・対物賠償責任をカバーする保険を自動で提供しています。
任意保険：Uberが提供する保険だけではカバー範囲が不十分と感じる場合や、自転車での配達で自身のケガへの備えを厚くしたい場合は、個人で自転車保険や傷害保険に加入することも有効です。

始める前に再確認！メリット・デメリットの総まとめ

最後に、会社員がUber Eatsの副業を行うことのメリットとデメリットを整理します。

Uber Eats副業のメリット

自由な働き方：最大のメリット。本業の都合に合わせて、平日夜や週末など、空き時間を有効活用できます。
人間関係のストレスが少ない：基本的に一人で完結する仕事のため、職場の人間関係に悩むことがありません。
運動不足解消：特にデスクワークの会社員にとっては、体を動かす良い機会となり、ストレス解消にも繋がります。
即金性：報酬は週単位で支払われるため、すぐにお金が必要な場合に助かります。

Uber Eats副業のデメリット

収入が不安定：天候や時期、配達員の数によって収入が大きく変動し、思うように稼げない時もあります。
体力的負担と天候の影響：屋外での肉体労働であり、夏場の暑さや冬の寒さ、雨天時の配達は体力を消耗します。
事故のリスク：常に交通事故のリスクと隣り合わせです。ケガをすれば、副業だけでなく本業にも支障をきたします。
消耗型の労働：働いた時間と体力が直接収入になる一方で、長期的なキャリアに繋がるスキルは身につきにくい側面があります。

まとめ：自分に合った働き方か見極めよう

Uber Eatsの配達パートナーは、会社員が手軽に始められる副業として大きな魅力を持っています。しかし、その自由な働き方の裏には、個人事業主としての責任が伴います。特に、税金の知識と会社の就業規則の確認、そして事故への備えは、始める前に必ず押さえておくべき重要なポイントです。

本記事で解説した内容を踏まえ、メリットとデメリットを天秤にかけ、自身のライフスタイルや体力、リスク許容度と照らし合わせて、本当に自分に合った働き方なのかを慎重に見極めることが成功の鍵となります。